
なぜかフッと、聴きたくなる。
60年代終盤~70年代前半を中心に活躍した、女性シンガー・ソングライター。
ジャニスも聴いた。
ジョニも聴いた。
キャロルも聴いた。
ローラも聴いた。
・・・そうやって「もうメジャーどころは順ぐりしたかなぁ」などと聴き辿っているうち・・・
フッと・・・目の前に現れ、出会ってしまうアーティストがいる。
ジュディ・シル(Judee Sill)。
アメリカのシンガー・ソングライター。
イーグルスやトム・ウェイツ、そしてボブ・ディランも在籍した「アサイラム・レコード」の第1弾アーティストとして、1971年発表のアルバム『ジュディ・シル』でデビューした。
▼1stアルバムより ”Lopin' Around Thru the Cosmos”。
彼女の曲やメロディー、アレンジはロックやフォーク、カントリーの影響を感じさせつつも
そうしたジャンルの持つレイドバック感はそこまで前面に出る感じではなく、
その”置き方”や”重ね方”にはどこかクラシカルな響き、構築美、様式美を漂わせる。
それもそのはずで。
・・・彼女が「多大な影響を受けた」とされているのが、バッハの韻律と組曲なのだ。
そのほかの影響としては、ゴスペルも勿論あると思われる。
そして、彼女の詞の世界観はキリスト教的な喜びと贖罪をテーマとしているようだ。
▼同アルバムの ”Jesus Was A Cross Maker”。
▼ヴォーカル・ハーモニーが美しい”My Man On Love”。
名曲 ”The Kiss” と、ジュディの曲に感じる ”神性”
1973年リリースのセカンドアルバム ”Heart Food” に収録の名曲、”The Kiss”。
彼女の作品屈指の、この名曲を初めて聴いた時は、衝撃だった。
・・・何とも言えない、崇高さ。
神とつながり、祝福を受けているかのような、その”神性”ともいうべき雰囲気。
しかしその ”神性” は ”曇りなく燦然と輝く光”、といった感じではなく
むしろ、あらゆる”濁”を知り尽くし、受容した果てにある”慈悲”の光とでもいうような感覚をもって、自分の中に入ってくる。
いつ聴いても実に素晴らしい、超名曲だ。
彼女はこれだけの素晴らしいクオリティを持つ楽曲を残し、高い評価を受けたものの
商業的には恵まれず、その後は表舞台から姿を消していく。
そして1979年。
ジュディはコカインの過剰摂取により、たった2枚のアルバムを残してこの世を去った。
(彼女の死後、3枚目のデモ音源等が「幻のサードアルバム」としてリリースされた。)
ジュディ・シル。
70年代初頭を、どこか人知れぬように駆け抜けた、素晴らしい女性アーティストだ。
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