【回顧録⑪】退職への迷いと、良きドクターとの出会い。

退職への、迷い。

自分の心身の正直さ、ひたむきさに全面降伏していた自分は。
 
あとは、決断するだけだった。
 
決めて、断つ。
 
最後の最後に待ち受けていたけれど、まだ迷いの余韻があった。
 
そのころ通っていた大学病院の心療内科では、
あくまで「症状」を診断し、名前を付け、薬を処方してくれるところまでの診療だった。
 
「二度とこうならないためにも、心の学びがしたい」
 
そう思った自分は、転院を決意した。

良きドクターとの出会いと、決断

新しいクリニックをネットで探す。
 
今の情報社会はすごい。
自分が願うキーワードを連ねるだけで、それにふさわしい候補がたくさん出てくるのだ。
 
そして出会った、今のクリニック。
 
決め手は、HPにあった、次の言葉。
症状よりも「 ”その人の問題の本質は何か" を大切にする」
 
また、薬漬けの治療が嫌いなことや、患者のためなら口酸っぱいこともあえて言う、と書いてあった。
 
ご都合主義で綺麗事を並べ立て、一時の癒しの連続と薬物地獄で
患者から医療費をとり続ける医者もいる、という中で。この人なら信用できるのでは、と直感した。
 
そしてその直感は的中することとなる。
 
 
来院最初のカウンセリングは、まず専用の部屋で。
臨床心理士のもとで念入りに行われ、問診票が埋まっていった。
 
そして、ドクターとの面談。
 
カウンセリング問診票を一読したドクター。
 
その直後の対応は。
...診察室越しに感じていた、他の患者に対する時間のかけ方とは明らかに違った。
 
自分への質問は、たった一つ。
 
「...それであなたは今、どうしたいのですか。」
 
...そう言い放ったきり、沈黙。ただただ、優しい表情で沈黙し、こちらの答えを待っていた。
 
  
もう、見抜かれていたんだと思う。
 
既にこの患者の中に答えがある。あとはそれをこの人が決断するだけ。
 
「...もう、辞めます。辞めて実家に戻ります。」
 
「そうですね。わかりました。」
「そうです ”か”。」ではなく、「そうです ”ね”。」
この違いに、このドクターの力量を感じた。
 
ドクターの言葉は、ひとまずこれだけ。
 
あとは、今後の方針。今後の話。
過去の振り返りは一切なく、今後のことのみにフォーカスして
最初の診療が終わった。
 
人によっては、このやりとりを「投げやりなドクターだ」と判断する人もいると思う。
でも、自分が感じていたのは、その真逆の世界だった。
実際、その後もドクターとは相性の良さを感じていて。
診療のたび、やりとりのなかでポロッと、ためになる言葉をくれる、味わい深い先生。

このドクターを引き当てた自分を、褒めてやってもいいかなぁと思う。

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